日中活動支援事業の全職員が一堂に会しての研修会を昨年9月に予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止とし、その代替として、職員個々が文献研究にとりくみました。
文献研究の題材は、殺傷事件から4年半が経過し、犯人の死刑が確定した
「津久井やまゆり園事件」です。死刑にすることで、この事件を終わらせてはいけない、なぜこの事件が起きたのか、命と人権の問題を考え続けなければなりません。以下、私の報告をお読みください。
文献名「相模原障害者殺傷事件―優生思想とヘイトクライム」
立岩真也、杉田俊介 共著(青土社)2017年1月5日第1刷発行
立岩は、「もう一つの相模原事件」について述べている。「殺害は、ずっと繰り返され、多くは家庭の中で起こってきた。2004年8月、相模原市でALSの長男(40歳)を母親が殺した。長男の将来を悲観し、人工呼吸を停止させ、殺害したとして、殺人罪に問われた。」「嘱託殺人罪が適用され、懲役3年、執行猶予5年、その後、母親は、精神を病み、2009年10月、死にたいという母親を夫が刺殺する。夫は、自殺を図るが、死ねず自首する。」嘱託殺人罪という判決だったが、事実は異なっていたという。「ALSの長男は、看護師の読み取る文字盤に、呼吸器は、苦しくてもそのままでよいと伝え、最終段階で、呼吸器の取り外しはしないと意思表示した。」
本人の意思は、ねじまげられ、他人に都合よく判断される。私も本人の意思を身勝手に思い込んで判断しているのではないか。反省や自戒なら誰でもできる。これから具体的にどうするかがわからない。わからないならば、その人とていねいにつきあい続けることしかない。その先に何かわかることがあるかもしれない。
次に、もう一人の著者、杉田俊介は、「内なる優生思想/ヘイト/ジェノサイド」が今ここにあるものであり、ありうるものである。」と述べている。
ヘイト:憎悪
ジェノサイド:集団殺害、集団抹殺
また、杉田は、述べている「植松青年の言葉に賛同したり、ひそかに共感したりするあなたたちが、どんな人間なのか、僕にはわからない。何らかの共通点があるのかどうか、それもわからない。……老若男女、ありとあらゆる立場の人がいるだろう。」また、「手紙を熟読すれば、一つ言えることがある。それは、青年の精神が、この国をじわじわと侵食してきたヘイト的なものの空気を確実に吸い込んでいる、吸い込んできた、という事実である。…彼の言葉は、ヘイトスピーチ的なものを醸造してきたこの国の『空気』をどう考えても深く吸い込んでおり、その意味でこれはヘイトクライム(差別的な憎悪に基づく犯罪)なのである。…これは、すでにジェノサイドを醸成しつつある空気の問題なのではないか。『障害者を殺せ』は、完全にヘイトデモなどで連呼されたおぞましい『朝鮮人を殺せ』『よい朝鮮人も悪い朝鮮人も殺せ』等の言葉と地続きなのではないか」と。(次号に続く)
(日中活動支援事業責任者 竹部直子)